労災保険(労働者災害補償保険)の保険給付とその仕組みをわかりやすく解説いたします。もしもの業務災害・通勤災害にご活用ください。
よくわかる労災保険
HOME » 労災ニュース » 大阪ミシュラン掲載店の調理師、大阪地裁が過労死と認定

大阪ミシュラン掲載店の調理師、大阪地裁が過労死と認定


大阪市の人気フランス料理店で働いていた調理師が亡くなり、労災を認められなかった件について、男性の妻の訴えにより、大阪地裁が過労死と認定し、2019年5月15日に国の処分の取り消しを命じました。

男性調理師は、2009年からこのフランス料理店で勤務を始めましたが、ミシュランガイドにも掲載されたことがある人気店だったため、毎日過酷な労働を強いられます。

午前8時ごろ出勤し、閉店後も明け方まで清掃などの業務をすると、帰宅して少しの睡眠でまた出勤という日々を過ごしていました。

一睡もせずに出勤していたこともあったそうです。

過労死ラインは時間外労働(残業)月80時間ですが、男性調理師は、月250時間以上、多い月は300時間近く残業していました。

その結果、ウイルスに感染し、2014年6月に急性心筋炎で亡くなってしまったのです。

男性調理師の妻は、労災保険の遺族補償給付の手続きをしましたが、大阪中央労働基準監督署は2014年12月に不支給を決定。

この決定に納得できず、国の処分取り消しを訴えたところ、大阪地裁が、「長時間労働による免疫機能の低下が原因で感染症になった」と相当因果関係を認め、2019年5月15日に国の処分を取り消すように命じました。

この判決を受けて、厚生労働省は検討中とのことです。

飲食店の長時間労働が問題

大阪地裁の判決後、男性調理師の妻は、「過労が原因と認められてうれしい。飲食業界の長時間労働が改善されてほしい」とコメントを述べました。

確かに、飲食店は長時間労働が多く、残業代も出さない所が多いです。

当然、労働基準法違反ですが、使用者が知らない場合に加え、経営優先であえて長時間労働・残業代なしをしている使用者もおり、かなり悪質な業界となっています。

したがって、自らの健康と権利を守るために、労働者も労働基準法を学び、防衛しなければなりません。

使用者の言いなりで働いていたら、いつまで経っても飲食業界から長時間労働・残業代なしのブラック企業はなくならないでしょう。


関連記事

東京都内の建築設計事務所に勤務する女性が適応障害を発症し、2019年3月18日付で中央労働基準監督署に労災認定されていたことが明らかになり...


2018年12月12日、厚生労働省が、東京電力福島第一原発事故の収束作業に従事し、その後、甲状腺がんを発症した男性について、12月10日付...


2019年12月10日に労働政策審議会の部会が開かれ、「労災保険では本業と副業・兼業の労働時間を通算する案」が大筋で了承されました。 ...


2018年10月30日、厚生労働省が『過労死等防止対策白書』を発表しました。 それによると、次のとおり、医療関係者の過労死が深刻であ...


2016年に自ら命を絶ったエーザイの元部長・泰敬さんが、2019年2月28日付で労災認定されたことが明らかになりました。 泰敬さんの...



コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

最新記事

労災認定の基準

行為中は通勤でなくてもその後に元の道に戻った時は通勤とみなされる「日常生活上必...

労災認定の基準

出勤・退社時に行うささいな事は逸脱・中断とはみなされず、通勤として扱われます。...

労災認定の基準

飲食店に立ち寄り、その後の帰宅途中で災害に遭った場合は、その時の立場によって通...

労災認定の基準

単身赴任している場合、相応の理由があれば、赴任先住居と帰省先住所の移動中の傷病...

労災認定の基準

仕事の掛持ちで2つの会社の移動中に災害に遭った場合も、条件を満たせば通勤災害と...

労災保険カテゴリー

社労士試験

サイト情報