中皮腫で亡くなったバス整備士が石綿被害の労災認定を受ける
2018年8月7日、支援団体『中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会』が道庁で記者会見を開き、2007年1月に中皮腫で亡くなったバス整備士兼運転手・清川勇さんが、石綿被害による労災認定を受けたことを発表しました。
清川勇さんが労災認定されるまでの経緯は、次のとおりです。
- 1959年12月から1993年9月まで、主に運転手として道南バスに勤務
- 1964年4月から1年間、整備工場で補助業務に従事し、石綿(アスベスト)を含むブレーキパッドの張り替え作業や後片付け作業を行う
- 退職後の2006年3月、腹痛や嘔吐で緊急搬送され、腹膜中皮腫と診断される
- 2007年1月、清川勇さん死去
- 2018年3月、長男・正久さんら遺族が労災申請する
- 2018年6月、浦河労働基準監督署が労災認定
- 2018年8月7日、記者会見
長男・正久さんは、ずっと「なぜこんな病気になったのか?」と疑問に思うも、バス会社勤務が原因で中皮腫になったとは思っていなかったため、労災申請が遅れました。
実際、1年間、石綿を扱う仕事に就いていただけで、中皮腫になったと思う人や遺族は少ないでしょう。
バス運転手の石綿被害による労災認定は、2017年5月に労災認定された佐賀県の男性に続き、清川勇さんが2例目となりました。
このケースで労災認定された人は2人と少ないですが、労働基準監督署に認められていないというよりは、被災者や遺族が労災とは思っておらず、申請していない可能性が高そうです。
バスの整備士・運転手で、石綿を扱う仕事に従事し、中皮腫になった人や遺族は、『中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会』に相談すると良いでしょう。
中皮腫とは?
中皮腫とは、簡単に言うとガン(癌)です。
肺は「胸膜」、心臓は「心膜」、胃や肝臓などは「腹膜」というように、人間の臓器は薄い膜に覆われていますが、その膜の表面は「中皮細胞(ちゅうひさいぼう)」で構成されています。
その中皮細胞から発生したガンが「中皮腫」です。
出来た場所により、「胸膜中皮腫、心膜中皮腫、腹膜中皮腫」と呼び方が変わり、症状も違います。
中皮腫の原因のほとんどが石綿(アスベスト)であり、早期発見が難しい病気です。
関連記事
東京都内の建築設計事務所に勤務する女性が適応障害を発症し、2019年3月18日付で中央労働基準監督署に労災認定されていたことが明らかになり...
2018年5月25日、野党が反対する中、働き方改革関連法案が、衆院厚生労働委員会で可決されました。 週明けにも衆議院を通過し、施行さ...
2019年12月10日に労働政策審議会の部会が開かれ、「労災保険では本業と副業・兼業の労働時間を通算する案」が大筋で了承されました。 ...
三菱電機と言えば、誰もが知る大手電機メーカーです。 多くの優れた従業員によって成り立っていることは、言うまでもありません。 し...
1954年にアメリカが太平洋ビキニ環礁で行った水爆実験により、癌や白血病などの健康被害に遭ったとして、高知県の元船員6人、遺族4人、宮城県...