副業・兼業も労災の時間・保険給付に反映!メリットとデメリット
2019年12月10日に労働政策審議会の部会が開かれ、「労災保険では本業と副業・兼業の労働時間を通算する案」が大筋で了承されました。
日本政府は、副業・兼業を推進しており、そのための法改正となります。
2020年の通常国会に改正案が提出され、2020年以内に施行される見通しです。
これまでの副業者・兼業者の労災保険、そして今後は?
労災保険は、労働者が仕事中に傷病等を負った際に事業主が行わなければならない労働基準法の災害補償の代わりであり、条件を満たせば事業主は加入しなければなりません。
労働者は保険料を負担していないのであまり実感はないでしょうが、「本業の会社」も「アルバイト・パートの会社」も労災保険に加入しているのです。
しかし、これまでは、「本業」と「副業・兼業」の労働時間が別々に扱われてきました。
例えば、A社で160時間、B社で100時間働いた場合、合計260時間なので、残業時間100時間となり、過労死ラインの残業100時間に達していますが、別々に取り扱われるので、どちらも法定労働時間の週40時間を満たし、残業時間はゼロとなります。
したがって、この条件下で亡くなっても過労死として労災認定されず、傷病になって会社を休んでも片方の賃金のみで算出した休業補償給付しかもらえませんでした。
ただ、今後は「本業」と「副業・兼業」の労働時間が通算されるので、労働者は手厚い保険給付を受けられるようになります。
副業・兼業が労災対象になるメリット
「本業」と「副業・兼業」の労働時間が通算されるメリットは、次のとおりです。
- 副業・兼業を含めた実労働時間が過労死ライン(残業100時間)の対象となる
- 休業補償給付の支給額が増える
- それぞれの事業主が労働者の労働時間をしっかり管理するようになる
副業・兼業が労災対象になるデメリット
「本業」と「副業・兼業」の労働時間が通算されるデメリットは、次のとおりです。
- 副業・兼業を禁止する会社が増える
日本政府が副業・兼業を推奨しているのは、少子化による労働力人口の減少を補う目的があります。
しかし、企業にとってはメリットがないため、就業規則等で副業・兼業を禁止していることも珍しくなく、一部の労働者のみが副業・兼業している状況です。
そして、副業・兼業している人は、働きすぎという問題も明らかになっています。
そんな状況で、副業・兼業が労災対象になれば、会社はますます副業・兼業を認めなくなるでしょう。
関連記事
2018年5月25日、野党が反対する中、働き方改革関連法案が、衆院厚生労働委員会で可決されました。 週明けにも衆議院を通過し、施行さ...
2018年8月21日、化学メーカー『新日本理化』の徳島市にある工場の元従業員(70歳)が、オルト―トルイジンによる膀胱がんを発症したとして...
2018年10月30日、厚生労働省が『過労死等防止対策白書』を発表しました。 それによると、次のとおり、医療関係者の過労死が深刻であ...
2018年8月7日、大手居酒屋チェーン『わらわら九大学研都市駅店』の元店長で、勤務中に亡くなった53歳の男性について、福岡中央労働基準監督...
2016年に自ら命を絶ったエーザイの元部長・泰敬さんが、2019年2月28日付で労災認定されたことが明らかになりました。 泰敬さんの...